宗教研究
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「文明の衝突」の時代の宗教寛容論(<特集>宗教-相克と平和)
八巻 和彦
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2005 年 79 巻 2 号 p. 425-450

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抄録
宗教的抗争が生じる原因には、<聖と俗>、<自己と他者>を峻別するという宗教の本質に由来する点と、異なる儀礼への違和感に由来する点とがある。それゆえに宗教寛容の実現のためには、宗教の本質が共通であるという認識と儀礼の多様性が容認されうる理論の共有が必要となる。そこで論者は、人間の生活活動を三層に分けて、最下層と最上層には人類としての共通性が存在するが、中間の「具体的生活」層には自然条件の多様性に起因する多様性が顕著であり、その一つとして宗教儀礼も多様であることを指摘する。他方、共通の層に、人類に共通の宗教的能力(宗教心)があることを指摘しつつ、多様な儀礼はその現象形態ととらえる。しかし、信仰する実存にとっての宗教の代替不可能性のゆえに、他の宗教に対する寛容を成立させるためには、直截的な説得ではなくて、比喩や隠喩による説得が必要となる。なかでも、全人類に遍在する言語能力とのアナロジーによる寛容論が、宗教集団同士の抗争が言われる現代の寛容論としては有効であると考えて、それを紹介する。
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© 2005 日本宗教学会
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