宗教研究
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ユスティノスにおける聖餐聖別の概念 : δι' ευχη〓 λογου Του παρ' αυΤου(『第一弁明』六六・二)の解釈をめぐって
打樋 啓史
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2006 年 80 巻 1 号 p. 45-65

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抄録
二世紀半ばに記されたユスティノスの『第一弁明』六六・二には、「彼から来る祈りの言葉によって(δι' ∈υχη〓 λογου Του Παρ'αυΤου)感謝された食物」が「イエスの肉と血」であるという記述がある。いくつかの理由から、このギリシア語の句は六六・三で引用される制定物語においてイエスがパンと杯の上に唱えたとされる「感謝の祈り」に関連し、「イエスに由来する感謝の祈りの言葉」を指すものと思われる。しかし一方で、ユスティノスが聖餐をロゴスの受肉との類比からとらえているので、λογο〓が「言葉」と同時に聖餐における人格的なロゴスの現存を暗示すると考えられる。このようなλογο〓 の意味の二重性を理解する鍵となるのが、語られたまたは記された言葉としての神(またはキリスト)の言葉を通して、動的な神のロゴスが現存し効力をもつというユスティノスのロゴス理解である。これらを総合すれば、ユスティノスの聖餐聖別の概念が明らかになる。ユスティノスは、キリストに由来する祈りの「言葉」を通して聖餐の場に「ロゴス」が動的に現存することによって、受肉においてロゴスが肉となったのと同じように、ロゴスがパン・杯という物質と結合し、そこにキリストの血肉が現存すると考えたのであろう。
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© 2006 日本宗教学会
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