宗教研究
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人間の事柄としてのスピリチュアルケア(<特集>生命・死・医療)
棚次 正和
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2006 年 80 巻 2 号 p. 267-291

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抄録

人生の意味や自分の存在理由などの人生の根本問題が未解決ゆえに生じるスピリチュアルペインは、人間である限り、多少なりとも誰もが抱く苦悩や苦痛である。したがって、それに対するスピリチュアルケアも、人間存在に固有の事柄として理解される必要がある。しかし、わが国の医療の現状は、万人の問題としてスピリチュアルケアが行なわれるような体制にはない。その主要な理由は、「スピリチュアル」という外来語に対する違和感や、宗教的ケアが医療に組み込まれていないわが国の医療の極めて特殊な事情に求められるだろう。本論では、「人間の事柄としてのスピリチュアルケア」の認識を深めるべく、「ケア」論と「スピリチュアル」論の双方向から概観的な考察を試みる。この考察から立ち現れて来るのは、スピリット(霊)を核心とする人間存在の全体像である。つまり、霊・魂・体、あるいは霊・心・身の三重構造が浮上するのであるが、この人間の自己認識には幾つかの困難が伴うことが予想される。

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© 2006 日本宗教学会
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