2006 年 80 巻 2 号 p. 313-338
医学発生の根源には「魂への配慮」がある。近代の分析的な知は局所的対応を追求してきたため、ケア本来のあり方は精神医学や心理療法などの領域にかろうじて残る結果となった。しかし、それら領域は実践・理論における統一性を達成できていない。このことは「霊性」概念の多様性に対応する。この問題を解きほぐすために以下の考察を行う。近代の分節された理解では、「心理」がもっとも直接的な体験と観念されているが、「たましい」は「心理・身体・社会」の三次元全体を包括し、世界に対して開かれている。「心理」が「たましい」本来の開けを取り戻すには、有限な存在としての「身体性」を受け入れなければならない。それによって、他者にも開かれ、不可分に絡まり錯綜した三次元全体が調和する。また、このような開けそのものを可能にする「場」こそが「霊性」に他ならず、それはケアの基盤であるのみならず、個別の特定宗教を宗教たらしめる基盤ともなっている。