宗教研究
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治療技術が捨てられるとき : ロボトミーの盛衰をめぐって(<特集>生命・死・医療)
大宮司 信
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2006 年 80 巻 2 号 p. 339-354

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抄録

本論文では、精神医学の領域でかつてもちいられ、今はまったく捨てられたロボトミーという治療技術の盛衰を通して、医療技術の忌避の要因について考えた。第一にあげられる点は、心や精神という人間それ自体と同義に考えられる対象に対する医療の適用への嫌悪感・拒否感である。第二は治療手法の非可逆性である。ロボトミーが捨てられた最大の原因は、取り返しのつかない後遺症をもたらした点である。第三は、医療技術の開発は目的に対応する計画的な準備だけでは不十分で、多彩でしかもまったく偶然的な要素の出現が、アミダくじ的に組み合わさって可能になるという、「医療のアミダくじ的な展開」という村岡の指摘である。抗精神病薬の登場は、ロボトミーをのこすか捨てるかという当時の議論をとびこして、必要としなくてよいとする決定因のひとつとなった。このアミダくじの一部を担いうるものとして、宗教は医療や倫理とはまた違った仕方で、視座を与えうると筆者は考える。

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© 2006 日本宗教学会
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