本稿の目的は、死の臨床において宗教者が優先するべき援助方法について考察することである。末期患者とその家族が抱える苦悩の一つに、死後についての問いがある。このことは、ターミナルケアへの宗教者の関与を促すものだが、それは日本のターミナルケアに宗教者の関与を保証するものではない。その関与の方法について、すなわちスピリチュアルケアと宗教的ケアの相違については、臨床的見地から吟味する必要がある。失敗例を含む五つの事例からは、さまざまな死後存続の信念が素朴に表わされ、それぞれの信念に沿った対応が必要であることが分かる。筆者自身がビハーラ僧として経験したものであり、それらを提示・分析した。諸事例とその考察等によって、宗教者が優先するべき援助方法は、対象者を教義的に導くこと(宗教的ケア)ではなく、対象者の信念に寄り添うこと(スピリチュアルケア)である、ということを明らかにした。