宗教研究
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明治聖徳論研究の課題と展望 : 明治神宮創建の神道学的理解に向けて
佐藤 一伯
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2007 年 81 巻 1 号 p. 93-115

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抄録

明治神宮創建の神道学的研究において、近代日本人の明治天皇・昭憲皇太后を景仰する意識(明治聖徳論)の考察は不可欠である。この従来あまり顧みられなかった視点から研究史を再検討し、「身体」を指標とする天皇像・皇后像研究の新しい成果を踏まえつつ、神宮創建過程の解明に向けての予備的考察を行った。とくに近年は「天皇制」(イデオロギー)を主体とする研究から「天皇像」(個性)の研究へと問題設定が転換した一方、研究者の関心が政治史や日常生活の描写へと細分化し、天皇・皇后の「徳」という精神的要素への関心が薄くなっている。そこで戦前の神道研究の成果(加藤玄智編『明治・大正・昭和 神道書籍目録』など)にも手がかりを求め、大衆文化としての新聞・雑誌・出版物、明治神宮創建時における多様な人々の動向・思想、そして奉賛活動、参詣者の現象など、広範にみられる明治聖徳論を思想史的に考察することの必要性を確認した。

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© 2007 日本宗教学会
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