宗教研究
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「神仏習合」論の形成の史的背景(<特集>神仏習合とモダニティ)
佐藤 弘夫
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2007 年 81 巻 2 号 p. 211-234

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抄録

今日神仏習合研究が行き詰まっている一つの原因は、「神仏習合」という視座を規定している歴史的な被拘束性に対する無自覚であり、その方法そのものが孕む問題性にあると考えられる。神-仏という二分法を前提とし、両者の習合と離反の距離を測定しようとする従来の神仏習合研究は、日本列島の宗教世界の主人公として超歴史的な実体である「神」と「仏」を想定するが、それはまったくのフィクションであり、「神」「仏」それぞれの概念も両者の区分も時代によって大きな揺らぎがある。そうした問題点を自覚した上で、今後「神仏習合」という研究のあり方を抜本的に再検討していく必要がある。そのための具体的な道筋としては、狭義の「神」「仏」が各時代の宗教世界全体に占める客観的位置を確定することが不可欠であり、その前提として「神」「仏」に留まらない雑多なカミの混在する日本列島の宗教世界を、ありのままの姿においてトータルに把握するための新たな方法の追求がなされなければならない。

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© 2007 日本宗教学会
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