抄録
一九九〇年代に急速に進行したグローバル化・情報化と呼ばれる社会変化は、宗教教育に関する従来の議論に介在していると考えられる認知フレームに加え、新しい認知フレームを導入することを要請している。日本における宗教教育についての戦後の議論は、宗教知識教育、宗教情操教育、宗派教育という三区分を前提とするものが多い。このうち宗教情操教育が公立学校において可能かどうかをめぐる議論が大きな対立点となってきた。その理由には、近代日本の宗教史の独自の展開が関わっている。しかし、近年は国際理解教育の一環としての宗教に関する教育、多元的価値観の共存を前提とした宗教教育、そして宗教文化教育などと、新しい認知フレームに基づくとみなせる研究が増えてきている。これは、宗教教育に関する規範的視点とは別に、全体社会の変化に対応して形成されたものであり、従来の多くの議論とは異なる新しいフレームが加わった結果であると考える。