宗教研究
Online ISSN : 2188-3858
Print ISSN : 0387-3293
ISSN-L : 2188-3858
<生命>の発見 : 岸本英夫晩年の「宗教」
中村 みどり
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 87 巻 1 号 p. 79-104

詳細
抄録

宗教学者岸本英夫は、人間を重視し、人間の問題を解決する宗教を模索していた。岸本が求めていたのは、主観を変え、心のかまえを進展させる道である。岸本は、現実の生活の中に永遠の生命を感得するならば、死の問題さえも解決できると考えていた。しかし、五一歳の時に皮膚癌で余命半年との宣告を受け、それ以前の研究も、観念的に把握していた生死観も役に立たないという事実を突き付けられた。その事実を受け止め、現代における人間の問題を解決する道を求め続けた末に、日本女子大学の創始者である成瀬仁蔵の思想に触れてから、岸本は死を「別れのとき」とみるようになり、心境は大きく変化した。死には実体はなく、生命だけが実体だと腑に落ち、岸本は「生命の絶対的な肯定論者」になった。岸本が晩年に発見した生命は、岸本が求め続けたこの世の永遠の生命だった。岸本の変化を追いながら、岸本晩年の「宗教」とこの生命の関係について考察する。

著者関連情報
© 2013 日本宗教学会
前の記事 次の記事
feedback
Top