宗教研究
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宗教と宗教ではないもの : インドネシアにおける「宗教」の変遷と人類学
相澤 里沙
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2013 年 87 巻 3 号 p. 497-522

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抄録

本論文は、オランダ人民族学者G・J・ヘルトとインドネシア人人類学者クンチャラニングラットの宗教概念を精査し、彼らが活動した独立後インドネシアの文脈の中に位置づけ、その意味を考察するものである。国民が公認宗教のいずれかに属すことを義務づけられた、事実上の宗教国家インドネシアにおいて、何が「宗教」で何が「宗教」ではないものなのかは、非常に重要な問題である。インドネシアの人類学は、植民地時代にオランダが設立した官吏養成講座を母体として誕生し、独立後の文化と宗教をめぐる議論の中で大きな役割を果たしてきた。ヘルトとクンチャラニングラットは、両者ともインドネシア大学で教鞭を執り、デュルケームを参考にして宗教と宗教ではないものについて考察を重ねたが、彼らの視線の方向の違いによって理論にも違いが生じたのだった。しかし、両者の理論はインドネシア社会への反応として形成され、インドネシアの宗教の動きを示していたのである。

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