宗教研究
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不可視の「神皇」 : 若林強斎の祭政一致論
齋藤 公太
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2013 年 87 巻 3 号 p. 523-547

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抄録

若林強斎(一六七九-一七三二)は闇斎学派をめぐる研究において朱子学から神道へと回帰した人物、あるいは神道と朱子学の高度な統一を達成した人物として語られてきた。しかしこのような位置づけは「民族宗教」としての神道の固有性を前提にしているといえる。本稿は祭政一致論などの政治的側面に着目することで、強斎の神道思想の読み直しを試みる。その結果明らかになるのは、強斎は朱子学と神道の同一性を語ることにより、「日本ノ道」としての神道と不可分なナショナリズムを媒介として、朱子学の実践に正統性を与えようとしていたということである。それは神道に傾斜したとされる享保九年(一七二四)以降も変わらない。そのような企図のもとで天皇は近世日本社会における朱子学の実践を保障する存在として解釈される。晩年の強斎は「道」の実践不可能性という問題に突き当たり、それに対応して天皇は人間の「罪」を許す「神皇」として再解釈される。

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© 2013 日本宗教学会
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