宗教研究
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利用・崇敬・規制 : 昭和戦前・戦中期における宮内省と皇族表象
茂木 謙之介
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2014 年 88 巻 1 号 p. 49-74

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抄録

本稿の目的は、天皇神格化言説の高揚する昭和戦前戦中期における皇族表象の様相とともに、天皇崇敬に関する宮内省のスタンスを明らかにすることにある。先行論では崇敬対象の天皇と崇敬主体の国民という構造が展開され、抽象的な議論になりがちであるが、本稿では具体性を以て表象される皇族に注目する。本稿では旧宮内省文書から考察を試み、統括官庁の方針を確認するとともに、文書に織り込まれた人びとの声を回復し、それらの経年変化を探る。結果、一九二六〜三七年まででは皇族表象を価値目的的に利用しようとする地域社会のスタンスと、それを規制していく宮内省のスタンスが、一九三七〜四一年前後では〈利用〉と共に皇族を崇敬対象とみなす地域社会の声とともに、その傾向を事実上黙認する宮内省の立場が、そして一九四一〜四五年では軍部の要請と相俟って、崇敬される天皇とそれを崇敬する国民という構造へ収斂させていく宮内省の在り様が看取された。

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© 2014 日本宗教学会
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