宗教研究
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ステインハルトの『幸福の日記』におけるエリアーデ宗教学に関する言及
奥山 史亮
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2014 年 88 巻 3 号 p. 701-725

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抄録

本書は、ルーマニア正教会の修道士であるニコラエ・ステインハルトの言論に対する保安警察の調査、およびステインハルトとエリアーデの交遊を整理することにより、エリアーデの言論が共産主義体制下において反体制運動を支援する言葉として受容されていた状況を明らかにする。ステインハルトは、ルーマニア国内にとどまりながら反体制的な言論を展開した人物として知られている。ステインハルトはとりわけエリアーデの宗教研究と文学作品に親しみ、それらを反体制的な言論に取り込んでいた。政治や経済体制に還元不可能な宗教性を重視するエリアーデの言論は、政党の統制から脱した文化活動を展開しようとしたステインハルトにとって親和性のあるものであった可能性が想定される。従来、エリアーデの宗教学は、大学や学界における宗教学の展開を学問史として整理する試みのうちで、その問題点や意義について論じられてきた。本稿は、政治的少数派の活動においてエリアーデの言葉が担ってきた意味を明らかにすることにより、宗教学の歴史を補完することを試みる。

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© 2014 日本宗教学会
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