宗教研究
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論文
フラートの著作におけるザイド派的側面の考察
イマーム派内での評価を巡って
平野 貴大
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2017 年 91 巻 1 号 p. 97-120

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抄録

本稿は九世紀後半から一〇世紀初頭にかけて活動したイマーム派学者のフラート・イブン・イブラーヒーム・クーフィーのタフスィール(クルアーン解釈書)におけるザイド派的側面の考察を主題とする。フラートの著作の中ではイマーム派的ハディースのみならず、シーア派諸派的ハディースも多く引用されている。シーア派諸派的ハディースの中でもザイド派的ハディースは数が多く、その内容がイマーム派の教義と相いれないものもある。本稿では、まず、初期にフラートがイマーム派内で評価を受けていなかった要因を分析し、その主たる要因が彼のザイド派的傾向であることを示す。次に、フラートのイマーム派内での評価の変遷を明らかにする。最後に、フラートのザイド派的側面の特徴を明らかにする。上記の考察を通じて、初期のイマーム派文献の中にはシーア派諸派の伝承が混入しており、イマーム派と他派との境界が後世と比べて曖昧であったことを示す。

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© 2017 日本宗教学会
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