宗教研究
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論文
熊沢蕃山の「大道」と「神道」
井関 大介
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2018 年 92 巻 1 号 p. 1-26

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抄録

熊沢蕃山について、従来は主に実践的な修養論や合理主義的な経世論が注目され、「神道」の「再興」を唱える宗教論については深く議論されてこなかった。「蕃山の「神道」は結局のところ儒教に過ぎない」、あるいは「蕃山の「儒教」は本来の儒教ではなく日本化している」といった評価がなされるばかりで、いずれにせよ牽強付会による神儒習合として思想的価値を低く見積もられてきたのである。

本稿では「儒教か神道か」という不毛な本質主義的問題設定を避け、蕃山が「神道」をしばしば「大道」と表現していることに注目して、それが儒教経典に基づきつつ、儒教自体をも相対化する普遍主義的な議論であり、西欧の自然的宗教論と比較し得るような一種の宗教理論であることを論じる。その普遍主義的な宗教理論を近世の日本という具体的な時代、地域の状況に合わせて実践する宗教制度論において、蕃山は「神道」再興論を展開したのである。

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