2018 年 92 巻 2 号 p. 55-80
日本の近代国家形成が有する諸外国とは異なった特色である祭政一致国家と神社非宗教を確立させた基本概念が、神社における「祭祀」と「宗教」の分離=祭教分離である。本論は、三次にわたり展開された祭教分離のうち、維新直後における祭政一致の理念のもとになされた神祇官の再興から廃止に至る過程と密接に関連する明治五年の祭祀行政と神社行政の分掌としての第一次祭教分離を中心に、近代祭政一致国家成立の基盤形成について考察するものである。全体の構成としては、まず明治神祇官に関して、先行研究の成果をまとめつつ、その再興から廃止までを見直すことにより、その歴史的意義を再検証する。続いて第一次祭教分離の確立を中心に、近代祭政一致国家成立における基盤形成の過程を明らかにし、最後に祭教分離が近代の国家と神社の関係に与えた具体的な影響を挙げて、その歴史的な位置づけについて論及する。