宗教研究
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論文〔特集:ジェンダーとセクシュアリティ〕
民俗宗教研究におけるジェンダー視点の必要性
女性行者を中心に
小林 奈央子
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2019 年 93 巻 2 号 p. 57-78

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抄録

日本の社会において、女性が行者の道を選ぶということは、さまざまな困難や苦労が伴う。五障や血の穢れといった女性を聖なる領域から遠ざける教えや慣習に伴う問題はもちろんのこと、その女性に家庭があれば、直ちに家庭生活、そしてそれに伴う女性に課されてきた性役割との両立の問題を生じ、修行生活の大きな障壁となる。その一方で、男性行者の場合は、同様に家庭があっても、その限りではない。つまり、そこには性別にかかわる差異や非対称性が存在する。そのことを明示的にしてくれるのがジェンダーの視点である。

本稿では、女性行者を含む女性宗教者に関する研究の、中心的な担い手となってきた民俗学およびその研究手法に依拠した民俗宗教研究が、今日までそうした女性たちをどのように描いてきたかを批判的に検討する。そして、研究者や宗教者のジェンダーに対する意識改革の必要性と宗教教団が真にジェンダー平等を実現できる方途について論ずる。

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