宗教研究
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論文
一八九九年文部省訓令第一二号の成立過程における学校教育と宗教の関係の再編
法典調査会の議事録を中心に
髙瀬 航平
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2021 年 95 巻 1 号 p. 151-174

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抄録

一八九九年八月三日、文相は、訓令第一二号を発し、全ての官公立学校、および学科課程が法令により規定された私立学校における宗教教育や儀式を禁止した。この規制は、当初「私立学校令」の勅令案の一条文として起草されていたが、法案審議の過程でその内容や法令形式が複数回変更され、また発令後も文部省から解釈が指示された。従来、こうした変更は、学校における宗教教育や儀式の禁止を強硬に主張した文部省が、政府他機関からの反対などに妥協した結果として説明されてきた。もっとも「私立学校令」案から宗教に関する条文が削除された法典調査会における審議については、これまでその議事録が散逸したとされてきたため、議論の内容が具体的に明らかにされてこなかった。しかし、本稿筆者は、この議事録の現存を確認した。そこで本稿は、こうした新資料を分析することで、文部省が妥協したのではなく、改正条約の実施を準備し、また全ての「宗教学校」を「私立学校」として監督するために、以前から構想していた計画をほぼ実現していたと主張する。

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