宗教研究
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論文
地域社会における葬制変容の力学
山形県最上町契約講の連合と再編のモノグラフ
大場 あや
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2021 年 95 巻 1 号 p. 75-99

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抄録

本論は、地域社会における葬制が戦後どのようなプロセスを経て変容を遂げたのか、契約講と呼ばれる互助組織の連合と再編の過程を跡付けながら、変化の契機と力学を検討することを目的としている。本論で取り上げる山形県最上郡最上町の町場エリアには多数の契約講が林立し、火葬(野焼き)の遂行を支えていた。重油式火葬場の建設、霊柩自動車の導入を受け、契約講は労務的互助機能を放出していく。火葬場の建設は、組織再編に決定的なインパクトを与えたと同時に、契約講の連合組織が町行政との交渉の末に実現した成果でもあった。その背景には、町の財政状況に加え、戦後のまちづくりと新生活運動の機運を活用し、住民を取り込んでいった地域のリーダーたちの動きがあった。一方、葬儀社の参入による影響は副次的なものだった。専門業者の参入とパラレルに地域の互助組織が撤退し、相即的に葬制を変容させるのではなく、地域住民の主体性や合意形成こそが変化をもたらす最大の触媒となっていた。

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