宗教研究
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論文〔特集:宗教と疫病〕
新たな感染症の時代の弔いとケア
宗教的なものの新たな様態
島薗 進
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2021 年 95 巻 2 号 p. 25-51

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抄録

新型コロナウイルス感染症の世界的流行で多くの犠牲者が出た。犠牲者を看取り、葬儀で送ることもしにくい状況が続いた。ふだんの宗教行事を行うことも慎まざるをえなかった。十分な医療を受けられずに死亡する人や、仕事を続けられずに貧窮に陥る人、自死せざるをえない人も生じた。人類社会を襲う最大級の災害といってよい。東日本大震災では多くの犠牲者をともに慰霊・追悼する、あるいはともに偲ぶ機会が少なくなかったが、新型コロナウイルス感染症では、日本ではその機会が乏しい。世界的には政治的な動機をも含めて、さまざまな形で犠牲者を偲ぶ行事も行われた。他方、伝統的な宗教的応答とは異なり、苦しむ人をケアする行為や仕事の意義が見直された。理不尽な苦難に対してケアする行為で応答する人々への感謝・リスペクトにある種の宗教的意義を見てもよいだろう。

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