宗教研究
Online ISSN : 2188-3858
Print ISSN : 0387-3293
ISSN-L : 2188-3858
論文
「正直ノ道」
吉見幸和の祭政観
城所 喬男
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 95 巻 3 号 p. 25-48

詳細
抄録

尾張大國霊神社の儺追神事は、寛保年間まで儺貞捕という儀礼が行われ、刃傷沙汰などの様々な混乱を引き起こしていた。そのため尾張藩では、この問題に対処するため、専門家として吉見幸和(一六七三―一七六一)に意見を求めた。彼は独自の国史官牒主義を打ち立て、故実に基づきそれまでの習合的な神道説を論断してきたことで知られている。しかし儺追神事について論じた『儺追問答』では、この神事について故実や習合的な神事といった点については半ば目をつむり、それよりも民を困苦させる「淫祀」であったことに、その批判の矛先を向けている。

本論では、この『儺追問答』で幸和自身が自らの主張の基調にあったと述べている「正直ノ道」を手掛かりに、従来の研究史で語られてきた彼の思想を改めて問い直し、さらには彼の正直論が後の彼の神道の定義にも通底する祭政観の先駆的な実例であったことを明らかにした。

著者関連情報
© 2021 日本宗教学会
前の記事 次の記事
feedback
Top