本稿の狙いは、英語圏における「死者臨在感覚(sense of presence of the dead)」の研究史の整理を行い、それを手がかりに現代社会における死者の問題の扱われ方を考察することである。死者臨在感覚とは、何らかのしかたで、多くの場合には不意に、死者の存在を感じ取る体験のことである。心霊現象研究・超心理学、宗教意識調査、死別悲嘆研究といった諸潮流を確かめることで、死別悲嘆研究における「絆の継続」モデルの台頭が、死者臨在感覚への関心の高まりとともに進んだ過程であることが示される。
こうした死者問題やそれと関連した宗教への注目は、たしかに現世主義的世界観としての世俗主義を相対化しようとする動きである。しかし同時に、死者との関係を生者の心理に与える効果において評価し、それを取りもつ機能において各宗教伝統を横並びに扱うという点で、リベラル世俗主義という現代的条件に与するものである。