宗教研究
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論文
西田幾多郎の初期宗教哲学とその背景
新発見の宗教学講義ノートより
吉野 斉志
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2022 年 96 巻 3 号 p. 27-51

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抄録

本論では近年翻刻・公刊された西田幾多郎の「宗教学講義ノート」(一九一三~一四年講義)に基づき、時期の近い公刊著作『善の研究』(一九一一年)とも照応して、初期西田の宗教哲学の解明を目指す。

西田によれば、一方には純粋経験の統一があり、他方にはその分化発展と自己限定により個物が成立する。そして究極の統一にこそ「神」あるいは「宗教的なもの」が求められる。この思想は「宗教学講義ノート」でも共通しており、西田が同時代の様々な宗教論や思想史に関する著作を参照しながら宗教思想に判断を下す論に、はっきりとその立場が現れている。

また、『善の研究』の宗教論は「汎神論」を主張しているが、この論の背景も「宗教学講義ノート」を参照することにより、仏教が汎神論であるという理解と、その仏教を擁護する意図があったことが判明する。

西洋の文献を渉猟し、その内在的な批判から独自の論を立てようとした「西洋哲学者」としての西田の姿が、この読解から明らかになるはずである。

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