宗教研究
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96 巻, 3 号
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論文
  • 対人援助における倫理と宗教
    萩原 修子
    2022 年 96 巻 3 号 p. 1-25
    発行日: 2022/12/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    犯罪者の更生支援の活動はさまざまにあるが、一度犯罪者のスティグマを背負った者の更生が困難であることは、再犯者率の高さが示している。深刻化する高齢者や障害をもった者の再犯は、社会との絆が弱まり、出所後の行き場のなさから、再犯という負のスパイラルを示している。本稿では、法務省管轄下の更生保護施設、自立準備ホームであるNPO法人「オリーブの家」の事例をとりあげる。それは、自立後の再犯率が低く、設立者が元受刑者で、矯正施設で信仰を得た宗教者であるという点に着目したからである。本稿では、この施設における対人援助の特徴を、治療共同体モデルやナラティヴ・アプローチによって考察し、宗教者が対人援助でなしうる倫理の一端を叙述する。それによって、「宗教と社会貢献」研究において、事例研究の少なかった更生支援の分野に、本稿の知見を加えるとともに、宗教固有の価値を検討することを本稿の目的としている。

  • 新発見の宗教学講義ノートより
    吉野 斉志
    2022 年 96 巻 3 号 p. 27-51
    発行日: 2022/12/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    本論では近年翻刻・公刊された西田幾多郎の「宗教学講義ノート」(一九一三~一四年講義)に基づき、時期の近い公刊著作『善の研究』(一九一一年)とも照応して、初期西田の宗教哲学の解明を目指す。

    西田によれば、一方には純粋経験の統一があり、他方にはその分化発展と自己限定により個物が成立する。そして究極の統一にこそ「神」あるいは「宗教的なもの」が求められる。この思想は「宗教学講義ノート」でも共通しており、西田が同時代の様々な宗教論や思想史に関する著作を参照しながら宗教思想に判断を下す論に、はっきりとその立場が現れている。

    また、『善の研究』の宗教論は「汎神論」を主張しているが、この論の背景も「宗教学講義ノート」を参照することにより、仏教が汎神論であるという理解と、その仏教を擁護する意図があったことが判明する。

    西洋の文献を渉猟し、その内在的な批判から独自の論を立てようとした「西洋哲学者」としての西田の姿が、この読解から明らかになるはずである。

  • 方便と解釈されてきた大乗真実の教
    松山 大
    2022 年 96 巻 3 号 p. 53-77
    発行日: 2022/12/30
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    本論は、真宗の開祖、親鸞が二双四重の教相判釈において竪超を「大乗真実の教」と記述する事由の検討とその考察を主題とする。親鸞による経の領解方法は二双四重の教相判釈と呼慣わされているが、なかでも、『仏説無量寿経』から導き出される横超が真実であり重要であるとされる。それ以外の経は方便との位置付けが宗派内外で半ば常識である。だが、親鸞自身は『教行信証』「信巻」のいわゆる「横超断四流釈」において、聖道門に於ける頓教である竪超の経文について「大乗真実の教なり」と記述している。この記述さえも方便であるという、矛盾する理解がこれまで続いてきた。そこで本論において、一、菩提心釈と横超断四流釈での記述、二、『愚禿鈔』での記述、三、「化身土巻」真仮分判釈での記述、四、横超断四流釈後の便同弥勒の文における記述、以上の箇所での親鸞による教相判釈を吟味し、これまでとは異なる解釈の可能性を提示している。

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