宗教研究
Online ISSN : 2188-3858
Print ISSN : 0387-3293
ISSN-L : 2188-3858
論文〔特集:戦間期の宗教と宗教研究〕
サヌースィー教団
反植民地闘争を率いたリビアのスーフィー教団
塩尻 和子
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 97 巻 2 号 p. 153-173

詳細
抄録

第一次世界大戦前の一九一一年からリビアはイタリアによって過酷な植民地支配を受け、多くのリビア人が犠牲になった。そのなかで社会参加型の視点をもった神秘主義思想を目指したサヌースィー教団の活動は、戦間期のネオ・スーフィズムの一環であったとみなされる。その活動は砂漠の遊牧民の団結を目標に展開され、ジハードを掲げて武装集団を指揮し、リビアへ侵攻するヨーロッパ列強の撃退を担った。創始者の大サヌースィーによって最初の修道場が建設されて以降、特に第三代教団長の下では、リビア以外のエジプト、スーダンでも外国勢力と戦うことになった。神秘主義教団によるゲリラ戦は負け戦になることが多かったが、第二次世界大戦では連合軍に加わり、小規模ながらこの参戦によって戦後の一九五一年一二月にリビア連合王国の独立を勝ち取った。サヌースィー教団の活動は、西洋列強による植民地政策に抵抗する政治的活動を宗教的に意味づける効果があった。

著者関連情報
© 2023 日本宗教学会
前の記事 次の記事
feedback
Top