宗教研究
Online ISSN : 2188-3858
Print ISSN : 0387-3293
ISSN-L : 2188-3858
論文
ブーバー我-汝思想の焦点とその学問的位置づけ
『我と汝』刊行一〇〇年に寄せて
堀川 敏寛
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 98 巻 3 号 p. 1-23

詳細
抄録

本稿では、マルティン・ブーバーが執筆した『我と汝』(一九二三年)の刊行一〇〇年を契機に、新版著作集「対話的原理論文集」や「哲学と宗教論文集」の注解や序論を参照する。そしてブーバー我-汝思想の焦点がこれまで評されてきた対話論ではなく、他者論でもなく相対的存在間の関係論であることを述べる。次に、その思想を学問的に位置づけるという目的は、哲学ではなく、哲学的人間学であり、それは宗教性とも切り離せない具体的な体験を基にした我-汝の関係を焦点とすることを主張する。ブーバー思想の焦点は、第一に、彼が限定的な意味での哲学を否定的に評していたとおり、主-客分離的な抽象化や対象化を批判することである。第二に、他者からの語りかけという関係性が存在者よりも先行しており、その関係に向かって自らを向けて出会うことの大切さである。これは我-それの問題と我-汝による解決というブーバーの根本的な問題設定である。

著者関連情報
© 2024 日本宗教学会
次の記事
feedback
Top