2021 年 11 巻 3 号 p. 213-221
日米欧においては希少疾病用医薬品の指定制度が存在するが,その指定基準に違いがある.日本においては,AMEDが2017年から希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業を開始したが,この支援事業は開発費用の補助が中心であり,開発早期の研究開発を促進するという企業のニーズを必ずしも満たしていないと考えられた.そこで,日本での希少疾病用医薬品の開発をさらに促進できる環境にすべく,日本製薬工業協会 薬事委員会では,過去,規制当局に対し,希少疾病用医薬品の指定制度に関する要望を行ってきた.さらに,2020年,希少疾病用医薬品指定制度の現状の運用において企業が問題と考える点についてアンケート調査を行った.その結果,指定相談の際に既存薬・既存治療と比較して著しく高い有効性・安全性が示されていないことなどを理由に,指定要件を満たさないと判断された事例が多いことが明らかとなった.指定されなかったことにより開発の優先順位が下がる,開発が遅延する,開発自体を中止するなど,開発計画に影響を与えている事例が複数あった.さらに,指定された品目においても欧米と比較すると日本の指定時期は遅く,開発後期もしくは承認申請の直前に指定された事例が多くみられた.より早期に,より幅広く希少疾病用医薬品への指定が行われ,開発早期の研究開発を促進する仕組みが望まれる.