2022 年 12 巻 3 号 p. 235-245
本研究は,日本で未承認の医薬品も含めた日米欧三極における新薬の承認状況から,日本における新薬の開発遅延に繋がる要因を分析し,その回避に向けた方策を考察することを目的とした.研究対象医薬品は,2010年から2020年に米国および欧州双方で承認された新有効成分含有医薬品であり,日本における承認がそれよりも遅い,あるいは2020年末の時点で未承認である医薬品とした.欧米双方で承認を取得した時点から日本で承認されるまでの時間を応答変数とし(日本で未承認の医薬品については打ち切りデータとした),類似薬の有無や抗悪性腫瘍薬か否かなど8つを説明変数としてCox回帰分析を行った.解析の結果,類似薬が存在しない新薬,欧米で承認を取得した企業に日本法人がない新薬は,日本で開発が遅延することが示唆された.日本で承認された品目のみを対象とした解析では,オリジネーター企業と日本で承認を取得した企業が一致していない新薬,予測販売額が小さい新薬などは,日本での承認取得が遅れることが示唆された.この結果をふまえて,薬事規制や薬価制度など,さまざまな視点からドラッグラグに対する対応策を検討していくことが重要である.