2023 年 13 巻 3 号 p. 151-161
コンパッショネートユースは致死的な疾患を有する患者に対して,代替治療法がない場合に利用でき,例外的に臨床試験段階の未承認薬を患者に使用できるようにする制度である.この制度は日本においては拡大治験と呼ばれ,2016年1月に制度制定されてから現在まで6年間しか行われていない制度である.そのため,詳しい実態の調査はできていない状況である.本研究は2016年1月~2022年5月末までに行った日本における拡大治験の実施状況について入手可能なデータをもとに調査したものである.6年間のデータを集めたところ,合計36試験(31剤)の拡大治験が行われており,主たる治験に対する割合は1.53%であった.また,対象疾患として抗悪性腫瘍薬が最多であり,36試験中24試験であった.本研究から拡大治験は6年間で社会的要請や患者からの要請がある分野で行えていたことが判明したが,積極的には実施されていないことが示唆された.