2024 年 14 巻 1 号 p. 123-129
電子的な医療情報を体系的に集積しデータベース化した医療情報データベース(DB)については,市販後の安全性監視活動への利用環境が整いつつあった2017年頃から, これらDBを医薬品安全性監視に利用する際の基本的考え方が厚生労働省から通知されるなど, 医薬品安全性監視へのリアルワールドデータ (real-world data: RWD) の利用促進が図られてきた. この基本的考え方の通知発出から6年余りが経過してMID-NET®の本格的運用も開始し, 複数の医療情報データベースが利用可能となっているが, これらRWDを活用した調査結果によるいわゆる添付文書情報 (薬機法第68条の2の1項で公表すべきとされた注意事項等情報を指す. 従来の添付文書記載事項であり, 令和元年薬機法改正により電子的な方法により公表することが義務づけられた情報. 以下本稿では 「添付文書」 という.) の充実など, 製薬企業によるRWDの医薬品安全性監視への利活用は十分に進んでいない. その理由の一つとしてRWDから得られたエビデンスの添付文書への活用可能性が不明確であることがあげられている. このような状況に鑑み医薬品安全性監視への活用を促す観点から, 厚生労働省と独立行政法人医薬品医療機器総合機構 (PMDA) においてRWDから得られたエビデンスの添付文書への記載について考え方を整理し, 添付文書に反映するための仕組みを検討し, 第一弾として2023 (令和5) 年2月に通知などで示したため, 検討の概要について紹介する.