2024 年 14 巻 1 号 p. 131-139
日本における医療情報データベースネットワーク(MID-NET®)は,医療ビッグデータを活用した医薬品等の高度な安全対策を推進するために,電子カルテなどの医療情報を大規模に収集・分析するデータベースである.独立行政法人医薬品医療機器総合機構により管理・運営されている.本研究では,MID-NET®データをはじめとする医療情報の広範な活用に必要となる「データの標準化」と「データの品質管理」に関する取り組みを中心に,各医療機関が抱える課題とその解決策を検討した.MID-NET®は本格稼働に向けた準備として,2013年度からデータ品質管理を導入した.複数の機関が医療データを統合的に分析するにはデータ品質管理が重要であり,標準化されたコードマッピングもその一つである.MID-NET®の連携機関の医療マスターの品質向上を目的としたガバナンス手法を開発した.ガバナンス結果の提案は各施設にフィードバックされ,2020年8月よりガバナンスの本格運用を開始した.各施設の差異医療マスターを抽出するツールを開発・自動化した.ガバナンスセンターによる分類結果をもとに,医療従事者が最適な標準コードを提案し,毎月各施設にフィードバックした.標準コード提案後の登録率を高めるためにはさらなる検討が必要である.標準コードは各事業で管理するよりも各医療機関の部門システムなどの上流で管理することが効率的で正確になると思われる.