2024 年 14 巻 1 号 p. 91-105
国内では2020年以降,ジェネリック医薬品を中心とした安定性モニタリングにおける製品規格への不適合と,それに伴う自主回収や供給停止,販売中止が頻繁に発生し,医薬品不足の大きな原因となった.本研究では独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)ホームページに掲載されている安定性関連の製品回収について,品質保証や安定供給に対する重大なリスクとしての観点から,原因と対策を検討した.供給停止や販売中止に至る事例は,2020年から2021年にかけてGMP不適合で行政処分を受けた製造販売業者の製品で集中的に発生した.これらの製品の多くは,プロセスのコンプライアンスを向上させても,安定性を確保することが困難であり,品質による設計(QbD)の概念を軽視した不適切な製剤とプロセス設計が強く示唆された.後発医薬品の安定性に関する問題の軽減には,製品開発や製造管理の改善に加え,開発時に実施する安定性試験の規定の見直しが望ましい.先発品と長期収載品の安定性モニタリングに関連した回収は,1990年代以前に開発された製品で起こっていた.また適切に開発された製品で起こる安定性モニタリング時の散発的な規格不適合について,供給に及ぼす影響を軽減することも必要である.