レギュラトリーサイエンス学会誌
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腸内細菌による薬物代謝を考慮したレギュレーションの現状と課題
庄 真喜子太田 翔平橘 敬祐近藤 昌夫
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2024 年 14 巻 1 号 p. 81-90

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抄録

昨今のメタゲノム解析の進展と相俟って,ファーマコマイクロバイオミクス解析が進み,すでに50種類以上の薬剤の腸管における薬物代謝に腸内細菌が関与していることが明らかとなっている.薬物間相互作用に係るガイドライン(平成30年7月23日付薬生薬審発0723第4号)に腸内細菌に係る論点も記載されているが,わが国における承認審査における現状などについて系統的に解析された報告はない.そこで本研究では,2017(平成29)~2021(令和3)年度の5年間に承認された新医療用医薬品について,薬事関連文書(審査報告書,インタビューフォームおよび添付文書)を調査し,腸内細菌に係る薬事の現状整理を試みた.新医療用医薬品として承認された618品目のうち,腸肝循環する医薬品は55品目(11.2%)を数え,このうちグルクロン酸抱合および腸肝循環をともに受ける医薬品は38品目であった.脱グルクロン酸抱合に関与する腸内細菌は多く,これらの医薬品は腸内細菌によって薬物動態が変化する可能性がある.一方,腸内細菌による薬物動態への影響が薬事関連文書内に記載されていたのは16品目にとどまっていた.腸内細菌叢を構成する1,000種類以上の腸内細菌について,薬物動態に寄与する腸内細菌が網羅的に同定されておらず,レギュラトリーサイエンス研究が立ち遅れている現状が窺えた.

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© 2024 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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