2025 年 15 巻 1 号 p. 29-36
後発医薬品を中心とした最近の医薬品の供給不安の背景には,後発医薬品の産業構造,薬価制度,流通などにおける多くの課題が存在する.少量多品目生産という産業構造もその一つであり,近年活発化している後発医薬品の共同開発との関係も指摘されている.また,共同開発の一種であるいわゆるオーソライズド・ジェネリック(AG)が後発医薬品市場での過剰な価格競争を助長している可能性も示唆されている.本研究では,わが国における近年の後発医薬品の共同開発の状況を報告する.近年承認・薬価収載された後発医薬品のうち収載品目数が多いものについて調査した結果,半数以上の後発医薬品において参入企業の50%以上が共同開発グループに含まれていること,また,同じ共同開発グループに属する共同開発品目であっても改定後の薬価が製品ごとに異なっている場合が多いことが示された.同じ有効成分の後発医薬品数が増加することにより,価格競争が激化するのみならず,流通にも悪影響を及ぼしていることが推測される.また,3分の1以上の有効成分にAGが上市され,いずれも市場の大半を占めており,適正な競争を阻害している可能性がある.今後,薬価制度の見直しを含めた複数の視点から後発医薬品の共同開発の取扱いについて対応を検討し,持続的かつ安定的な製品供給が可能な製造販売企業の絞り込みと,後発医薬品間の適正な競争をベースとした安定供給体制の構築につなげていく必要がある.