2025 年 15 巻 1 号 p. 37-44
日本における医療従事者の生涯教育は体系的な枠組みとして整っているとはいい難く,その多くが自主性に委ねられている.医療系学会・製薬企業などさまざまなステークホルダーが生涯教育をそれぞれの視点で支援しているが,製薬企業が行っている生涯教育支援活動は医療従事者からのニーズや期待も高く,一定程度の役割を果たしていると考えられる.一方,業界規制による提供情報の制限,医療従事者との教育ニーズの不一致,短時間かつ単発の講演会となるケースが多いなど,いくつかの課題が存在する.それらの課題を解決しうる製薬企業による新たな生涯教育支援の手段のひとつに,メディカルアフェアーズが主導するIME Grants(Independent Medical Education Grants)がある.IME Grantsとは,製薬企業から完全に独立して実施される継続的な教育プログラムに対して,資金の提供を通じて製薬企業が支援する助成制度であるが,この制度を運用している製薬企業はまだ少ない.本稿ではIME Grantsの運用プロセスを紹介するとともに,製薬企業が新たにIME Grantsを導入する際の留意点を提示する.医療従事者と製薬企業の双方がIME Grantsを適正に運用することによって,継続的かつ効果的な教育プログラムの実施が期待される.