抄録
本研究では,日本発の革新的医薬品の実用化に向けて,ベンチャー企業と製薬企業の間のアライアンスに関する認識のギャップを埋めるため,この認識のギャップを客観的かつ定量的に示すことを目的とし,ベンチャー企業と製薬企業に対するアンケート調査及びヒアリング調査を行った.調査の結果,両者の間にはアライアンス不成立の理由,製薬企業のライセンス検討の時期などについて認識のギャップがあり,それに伴う問題点があることもわかった.これらの原因を調査することによって両者の円滑なアライアンスを阻害するボトルネックを考察した.ベンチャー企業は,製薬企業による評価方法,アライアンス提案先の適切な選定方法について意識又は理解が不足していた.一方,製薬企業はアライアンス提案に対する断り理由の説明や,アライアンスの意思及び興味を持っている分野・技術等の内容についての情報提供が不足していた.これらがボトルネックと考えられた.特に,製薬企業がアライアンス提案に対して,「開発ステージとして時期尚早」とのみ伝え,ベンチャー企業に断りの理由の真意が十分伝わっていないことは,ベンチャー企業が製薬企業の視点での改善を行わないまま,単に開発を先に進めればよいと誤認することになり,両者のアライアンスにとってマイナス要因となると考えられた.