抄録
冠動脈ステントの破断は, 再狭窄やステント血栓症のリスクとして認識されている. しかし, 実際の発生頻度は明確になっていない. 本研究は, 査読付き論文を調査することによって国内におけるステント破断の発生状況を評価し, 不具合報告の現状を明らかにすることを目的としている. 2014年4月1日にPubMedおよび医学中央雑誌 (医中誌) を用いてステント破断の発生に関する文献分析を実施した. PubMedでは, 「stent fracture」を検索単語として使用した. 医中誌では, 「冠動脈」「ステント」「fracture」「破断」「破損」を検索単語として使用した. PubMed検索で895報が検索された. これらの中で, 日本以外の施設にて実施された文献が792報, 冠動脈が対象ではない文献が45報, ステント破断とは関係のない文献が17報, 同一症例を対象としていると考えられる文献が11報あった. これらを除外し, 14報の観察研究および16報の症例報告で合計30報を解析対象とした. 査読付き論文では643病変でのステント破断, 不具合報告では105病変でのステント破断が報告されていた. 14報の観察研究から, ステント破断の発生頻度は5.4% (10,927病変中595病変) であった. 不具合報告から得られたステント破断の発生件数は, 文献分析によって得られた発生件数より6.1倍少なかった. これらの結果から, 不具合報告によって把握できる発生状況は, 実臨床で発生している状況の一部分を表しているに過ぎないことが定量的に示された.