2016 年 6 巻 3 号 p. 255-268
本研究では, 日本での希少疾病用医薬品開発の現状把握とさらなる促進のための要素を考察することを目的とし, 2010~2014年の5年間に日本で新医薬品として承認された希少疾病用医薬品について, ドラッグラグ (承認ラグ) および指定ラグの調査・分析を行った. 調査の結果, 日本の希少疾病用医薬品開発はUS・EUの後追いタイプが多く, また日本ローカルのものが最大で1/4程度存在した. 日本に先行しUSまたはEUで最初に承認された案件でのドラッグラグ (カッコ内は製薬企業が自発的に開発を行ったとみなすことのできる案件でのラグ) 中央値はそれぞれUSから50.0 (25.1) 月, EUから34.8 (20.4) 月であった. 一般的に日本での新医薬品のドラッグラグ問題は解消されてきたという傾向の中にあっても, 希少疾病用医薬品の世界においては依然として海外からのドラッグラグが大きいことが明らかとなった. 指定ラグ中央値はそれぞれUSから63.8 (30.6) 月, EUから46.7 (30.0) 月であった. さらなる検討の結果, ドラッグラグおよび指定ラグの原因として開発着手でのラグ (開発着手ラグ) および指定申請でのラグ (指定申請ラグ) の影響が大きいことが考えられた. 今後日本での希少疾病用医薬品の開発着手ラグおよび指定申請ラグの解消, さらなる開発促進に向けて, 既存の指定基準や助成制度の運用方法およびインセンティブの見直しを検討する必要があると考える.