レギュラトリーサイエンス学会誌
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Analysis of New Drug Pricing and Reimbursement for Antibody Agents for Cancer Treatment in Japan
Ryo NAKAJIMAAtsushi ARUGA
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2017 年 7 巻 3 号 p. 173-184

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抄録

近年, 高額な抗体医薬品 (抗がん剤) が登場し, 国民医療費財源への懸念および薬価期中外改定の必要性を余儀なくされている. 医薬品の薬価は, 中央社会保険医療協議会 (中医協) における薬価算定基準に基づき算定され, その内, 他に類似した効能・効果, 作用機序などをもつ医薬品が存在しない場合, 薬価は原価計算方式で算出される. 筆者らは, 2004年10月~2016年8月までの中医協資料, 審査結果報告書を調査し, 原価計算方式で算出された抗体医薬品 (抗がん剤) 30品を抽出し, 薬価および薬価の大部分を占める製品総原価に寄与する因子を解析した. その結果, 企業が薬価申請の際に提出するピーク時予想売上が低い抗体医薬品ほど1カ月に要する費用が高額であることに強い相関性が認められ, また, 薬剤開発の研究費用が低い抗体医薬品ほど1カ月に要する費用が高額である傾向が認められた. 前者のピーク時予想売上が低いことによる影響は現行の原価計算方式の算出方法から推察される傾向であったが, 後者の研究費用が低いことによる影響は製品総原価の内訳情報が公開されていないため詳細に検討できなかった. これらの未公開の情報が適正価格設定に重要なファクターとなりうる可能性が示唆された. 公正で透明性のある薬価算出および薬価改定のためには, 製品総原価内訳の公開 (特に, 研究開発費償却計画) および適応追加ごとに研究開発費償却計画を作成し, 適応追加後の適切な薬価を検討するべきである.

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© 2017 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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