2018 年 8 巻 2 号 p. 123-128
さまざまな器官・組織由来の間葉系幹細胞から製造された細胞加工製品がヒト臨床へ応用されている. この製品を用いて治験を開始するにあたり, 非臨床安全性試験を実施して, ヒトへの安全性を事前に評価する必要がある. 日本における細胞加工製品の非臨床安全性評価については, 指針やガイダンスが発効され, 治験開始前に, 原則として一般毒性, 造腫瘍性, 生命維持にかかわる器官 (中枢神経系, 呼吸器系および心血管系) に対する影響評価, および不純物の安全性評価を実施する必要がある. これらの毒性試験の計画および成績は, ヒト細胞を動物へ投与した場合の免疫反応による影響を受けることから, 無毒性量や安全域を求めることより, むしろ有害性 (ハザード) 評価を目的とすることが適切と考える. また, 試験方法については, 個々の間葉系幹細胞の起源, 特性および製造工程の複雑さを考慮して, ケース・バイ・ケースの対応が必要と考える. 本稿では, 間葉系幹細胞由来製品の一般毒性および造腫瘍性試験, および生命維持にかかわる重要な器官への影響評価ならびに不純物評価を実施する場合の基本的な考え方について考察する.