レギュラトリーサイエンス学会誌
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原著
The Survey of Non-inferiority Trials for Cancer Drugs to Analyze Their Trends Including Guidelines
Hiroki KIUCHIShinji TAKEOKA
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2018 年 8 巻 3 号 p. 143-149

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抄録

 背景 : 非劣性試験は対照薬に比較し被験薬が臨床的に劣らないことを示しつつ, 安全性や治療利便性などのベネフィットの向上を提供することを目指す臨床試験である. がん領域においては, 非劣性試験はより良い治療選択肢を臨床医および患者へ提供しうる一方, 非劣性試験による新薬の薬事承認を否定する各極ガイドラインがないにもかかわらず, 非劣性試験による抗がん剤の承認はほとんどみられない. そこで筆者らは, 規制環境や, 臨床試験実施者や製薬企業の意図がどの程度非劣性試験に影響するかを明らかにすべく, 非劣性試験の現況を調査した. 方法 : PubMedより ‘(tumor OR cancer) AND (non-inferior OR non-inferiority) and (survival) and (species; human) and (published; until Dec 31, 2015)' という検索式にて, 関連論文を収集した. 得られた115報に対し, 実施国, スポンサー, 試験目的, 薬剤タイプなどを集計した. 結果 : 70%の非劣性試験が特定の地域に限局して実施され, そのほかはグローバルでの実施だった. 北米に限局した試験は全体のわずか4%であった. 65%の試験が, 医師団体などをスポンサーとする医師主導試験 (IIS) であった. 85%の試験は毒性の軽減や治療利便性の改善を目的とした試験であった. 18試験は未承認薬に対する試験で, 3剤が承認されていた. 結論 : 非劣性試験に関する各極ガイドラインの記載は異なり, 試験実施数の国別比較でも同様の傾向がみられた. また, 大部分の非劣性試験は地域に限局した試験であった. 未承認薬が非劣性試験により承認されたことから, ガイドラインが非劣性試験による抗がん剤承認を否定していないことが確認できた.

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© 2018 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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