2018 年 8 巻 3 号 p. 151-163
原発性骨粗鬆症治療薬開発のためには, プラセボ対照骨折評価試験の実施が必要とされている. 本研究の目的は, このプラセボ対照骨折評価試験におけるプラセボ群の被験者の不利益の低減および同治療薬の開発の効率化に繋がるデザインを提案することである. この目的のために, 米国, 欧州または日本で市販されている11薬剤に関する医学雑誌に掲載された無作為化プラセボ対照骨折評価試験に関する論文15報を調査対象として, 各試験の被験者コホートの骨粗鬆症の重症度に着目して検討した. 本研究では重症度の指標として, 新たに考案したパラメータであるプラセボ群の新規椎体骨折発生率×1000人/年として算出されるOsteoporosis severity of patient cohort (OSPC) 値を用いた. その結果, 治験薬投与開始前に1つ以上の椎体骨折を有する被験者の割合が約90%に増加すると, 当該試験のプラセボ群の被験者数は1,005例以下まで減少し (r2=0.5475), 当該試験のOSPC値は1試験を除き40以上となった (r2=0.6008). 次に, 調査対象15試験をそのOSPCをもとに3つの範囲 (<40, 40-<80 and 80≤) に分類したところ, OSPCが40以上, すなわち骨粗鬆症の重症度が比較的高い被験者集団を対象とし, 主要評価項目を椎体骨折抑制効果のみとした試験においては, プラセボ群の被験者数が少なく, かつ投与期間が短くなっていたことから, 試験期間中に新規に椎体骨折するプラセボ群の被験者数が少なくなっていることが明らかとなった. 以上のように, 原発性骨粗鬆症治療薬開発のための骨折評価試験は, 新規椎体折発生率を主要評価項目とし, 既存椎体骨折を有する骨粗鬆症患者を被験者とすれば, 現在の標準的な試験デザインよりも少ないプラセボ群の被験者数で, かつ短い投与期間で, 有効性を評価することができる. このような試験デザインは, 骨折評価試験に参加したプラセボ群の被験者の不利益を低減させることが可能であり, ひいては医薬品開発の効率化に繋がると考えられる.