レギュラトリーサイエンス学会誌
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原著
悪性腫瘍に関する医師主導臨床試験の結果公表状況調査
八田 朋大三宅 真二山川 直利漆原 尚巳
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2019 年 9 巻 3 号 p. 131-140

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抄録

医師が実施する医薬品の有効性や安全性調査を目的とした自主臨床試験の結果は, 結果の良し悪しにかかわらず既承認薬の適正使用や未承認適応症等の治療における重要な情報源であり, 治療方針の決定等に活かされる. しかしながら, 医師主導臨床試験の結果が学術論文や臨床試験登録データベースでの公表を通じて, 適切に利用されうる状況となっているかどうかは明らかではない. そこで, 本研究では臨床研究中核病院を対象に, 医師主導型の介入臨床試験の結果公表状況を明らかにすることとした. 2009年4月1日〜2015年3月31日にUMIN-CTRに登録されたものを対象に, 2017年3月1日までに試験が終了されている悪性腫瘍を対象疾患とした医師主導介入臨床試験を検索した. 対象病院は, 前述の条件を満たす試験が10を超える臨床研究中核病院とした. 主な評価項目は, 試験結果公表割合・UMIN-CTRへの結果概要入力割合とした. 対象病院および試験数は, 7病院で計142試験となった. 結果の出版割合は, 7病院全体で73.0% (102/141) であった. UMIN-CTRへの結果概要入力割合は, 4.9% (7/142) であった. 結果が出版されないことで有効に利用されていない臨床試験が約30%も存在し, 病院間でも顕著なばらつきがあることが明らかになった. 各施設で医師を含めた研究者の結果出版への動機づけを強化する必要があるだろう. また, 全病院にわたってUMIN-CTRの結果情報の入力が十分になされていなかった. 臨床研究法により, 特定臨床研究のjRCTへの登録と結果報告が義務づけられたことから速やかな結果報告が期待される.

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© 2019 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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