都市環境における表面土壌中の残留水銀の挙動について,熱分解法による形態およびその動態について調査した.一般都市環境の公園土壌,大学キャンパスおよび奈良市東大寺周辺土壌について調査した.その結果,用いた試料中の水銀種はおもに塩化水銀,有機物質結合水銀および硫化水銀であった.金属水銀は検出されなかった.酸性雨による溶脱実験では,抽出される水銀種はなかった.都市環境において,一旦土壌に吸着された水銀は化学的に安定な残留水銀種になることが判明した.土壌中の残留水銀の消失は大気への気化が唯一の経路である.