2006 年 45 巻 4 号 p. 228-241
医療事故は,医療従事者の不注意だけでなく,医療機器の不具合,教育や院内体制の不備,過酷な労働条件等さまざまな要因が複雑に絡んで発生することが多い.医療は,人が人になす行為である以上,医療事故にゼロリスクは有り得ない.医療事故を防止するためには,当事者は当然のことながら組織としても発生したミスや事故に積極的に学ぶしかない. 医療事故と産業事故とは共通面があり,共通した事故防止の方法論を用いることができると考えられる.本論文では,著者が提唱する「t―m―SHEL モデル―RCA ハイブリッド分析手法」を提案する.また,これを医療インシデント事例に適用し,インシデントに係る人的要因を各時間軸での状態遷移において明らかにすることが可能であることを示した.さらに,提案分析手法を用いてインシデントの直接要因,および根本要因について分析を行うことも可能であることを示した.