2009 年 48 巻 3 号 p. 161-168
過去の大地震,例えば2003 年十勝沖地震などにおいて,長周期地震動によるスロッシングにより大量の油が石油タンクから溢れた.この場合,火災の危険性はきわめて大きくなるが,石油タンクからの溢流量を正確に推定する方法はまだない.そこで,筆者らは模型タンクを用いた振動台実験で,溢流量推定の可能性を探った. 速度応答スペクトル法に基づき,筆者らはタンク側板上の溢流体積と液面減少高さで表される溢流量との関係を得た.この関係は浮き屋根の有無に影響されるが,ともに溢流体積の1 次式で表されることがわかった. 当該関係式を過去の地震における実際の溢流事例に適用したところ,2003 年十勝沖地震の事例に対してはかなり正確な推定を与えることが確認できた.さらに,簡易的に溢流量を推定する地震時の石油タンク溢流量推定システムを開発した.