東日本大震災後の復旧・復興作業を遂行する上で,夏の暑さと冬の寒さは不可避である.その上,がれきの撤去作業や除染作業では,粉じんや電離放射線からの防護と安全対策のために,マスク,ヘルメット,防護服,安全手袋,安全靴などの労働衛生保護具を着用しなければならない.これらの作業条件は夏季には作業者への暑熱ストレスを過酷なものにする.冬季の復旧・復興作業は特に被災地の大半が東北地方の太平洋沿岸の寒冷地域であることから,しばしば風雪や冷たい降雨に曝されて厳しい寒冷作業になる.本稿では,このような復旧・復興作業を遂行する上で懸念される暑熱,寒冷負担と健康障害の病因,病態,兆候について,温熱生理学的観点から概説した.またこれらの健康リスクを予防するための方策について,暑熱,寒冷ストレスの測定・評価法とそれにもとづく労働衛生管理対策のありかたに焦点をあてて論じた.