抄録
3・11 は,好むと好まざるとにかかわらず,放射線がさまざまな場面で常に存在している社会(放射線常在社会)であることを認識する契機となった.他方,高度なICT 機器の普及により,個人がその意志さえあれば必要な情報を獲得し,主体的に判断し行動するという「個人による編集権の獲得」が可能となった.放射線の安全を確保し,また不安を払しょくするためには,ICT の成果を活用し,さまざまな場面における個人の被ばく情報を適切に記録,分析評価し,その結果を当該個人にタイムリーに還元するとともに,データをビックデータとして集約し社会的に利活用できるシステムを構築する必要がある.このシステム構築には,さまざまな学問領域の協働が必要であり,「放射線常在社会」の放射線にかかる安全と安心に関する議論が学際的に深まることを望む.