霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: B-13
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口頭発表
世界でもっとも珍しいサルの一種、モデステゥスティティの新標本
-それは本当にオマキザル科で一番原始的なサルなのか?-
*小林 秀司名取 真人
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抄録
(目的)モデステゥスティティ(Callicebus modestus)は、オラーラ兄弟が1937年にボリビアのエル・コンスェーロ付近で捕獲した1成獣、1亜成獣の標本をもとに、E・レーンバーグが1939年に新種として記載したティティの一種である。ところが、本種は、原記載以来全く捕獲されておらず、しかも、生息地の森林が開発によって消滅したことで絶滅が示唆されるなど、もっとも稀少な霊長類の一つともいわれていた。このモデステゥスティティは、注目すべきいくつかの特徴を持ち、たとえば、ハーシュコヴィッツ(1990)は、脳容量がオマキザル科中でもっとも小さいなどの形質から、オマキザル科でもっとも原始的な種として位置づけた。しかし、この研究に用いられたのは、タイプ標本の一個体だけであり、しかも頭蓋の形状があまりにもティティ類一般とはかけ離れていたため、突然変異ではないかという指摘も出ていた(Kobayashi 1996)。このたび、著者らは、ストックホルム自然史博物館での新世界ザル標本の調査を行い、新たに一連のモデステゥスティティと思われる標本を発見した。さらに、これら標本を用いて、いったいモデステゥスティティとはどのような霊長類なのか解明を試みた。
(方法)発見された一連の新標本の、毛皮、頭骨、歯について、モデステゥスティティのタイプ標本並びに、類縁種であるドナコフィルスティティとの形態学的比較を行った。
(結果)発見された一連の新標本の形質を検討した結果、まず、毛皮標本からそれらの個体がモデステゥスティティであることが確認された。つぎに、頭骨の計測値に基づく分析結果では、タイプ標本の値は、新たに発見された標本類が示す値と明らかに異なっており、ドナコフィルスティティと近いものであることが示された。
(考察)モデステゥスティティのタイプ標本は、Kobayashi (1996)が指摘したように、著しく変形したミュータント的な個体であると考えられ、本来のモデステゥスティティは、やはりKobayashi (1996)が分析したようにドナコフィルス・グループの一種であることが明らかになった。
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© 2005 日本霊長類学会
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